ようこそジャンジャック書房へ!

ショパン・望郷のピアニスト


10chopin.jpg
ギ・ド・プルタレス著 高波 秋訳
(四六判 286頁 定価1680円(本体1600円+税5%)2010.12.)

 この本の原書の表題、“Chopin, ou poete”(ショパン ウ ポエト)を直訳すると、『ショパン、すなわち、詩人』と、なります。つまり、著者、ギ・ド・プルタレス(Guy de Pourtales 1881 〜1941)は、音楽家・ショパンが、詩人の魂を持って生涯をつらぬいた事実を、表題として掲げているのです。と、すれば、とうぜん、ショパンの音楽の根源に、詩人の魂が潜んでいる、と示唆していることになります。
 では、音楽家・ショパン(1810 〜 1849)の「詩人の魂」は、何を歌い、訴えているのでしょう。
それは、この、プルタレスの名著の、どこを覗いても熱く燃えている、ショパンの、望郷の思い、と言えそうです。ショパンは、二十歳のときに最後に見た祖国・ポーランドに、再会したいという思いを、生涯にわたって、持ち続けました。しかし、叶うことのなかった、その思いは、異境のパリで、迫ってくる自分の死の影に怯(おび)えながらも、家族や友人の誰かれに、いま一度、ここで、逢いたいと願って必死の努力をした、三十九歳の死の床へと、つながってゆきました。・・・
                       (「訳者のまえがき」より)

考える人・ルソー


09kangaeru.jpg
E・ファゲ著 高波 秋訳(四六判 286頁 定価1680円(本体1600円+税5%))

 人は、何故、社会を作って暮らすのか。法律には、何故、したがわねばならないのか。・・・・そんな問いを、けっして、口にしないのは、社会の現状の正しさを夢にも疑わず、自分の安楽な生活を第一に求めて、どんな法律にも、無条件に、服従する人、・・・と聞いたら、二十世紀フランスの論壇を代表する、この本の著者・ファゲは、大先輩のルソーと顔を見合わせ、心配そうに、口を揃えて、言うでしょう。「その人は、昆虫の社会の一員だ。人ならば、社会に同化するだけでなく、より自由、より平等な社会を作ろうと努力するはずだ。そして、間接的にもせよ、彼も、その法律の成立に参加したのだし、その法律が、彼も認める正しさを、持っているからこそ、彼は、法律に、したがうのでは、ないのか。第一級の科学・技術国・日本が、人類文化の精華である民主主義をも、早く体得することを期待したい」、・・・そのように、この本は、社会と人間の関わりを根本的に考えさせる、さまざまの問題を掲げて、読者に議論を挑んで来ます。

銀河鉄道と星の王子 ― 二つのファンタジ−の、接点


008.jpg
高波 秋著(四六判 208頁 定価1260円(本体1200円+税5%)2006.12.)

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』と、サン・テグジュペリの『星の王子さま』は、どちらも、ほとんどすべての日本人が知っている、名高いファンタジー(幻想文学)です。ところが、その二つの作品の、だれも知らなかった新しい読み方と意味を、この本が発見しました。
『銀河鉄道の夜』については、いくつかの資料のユニークな解読をとおして、主人公・カムパネルラのモデルが、作者の死んだ妹・トシであることを発見しました。併(あわ)せて、その、ファンタジーを、賢治が制作した理由と経緯(いきさつ)が明らかになりました。ジョバンニ、カムパネルラという名前の由来など、注目すべき発見も、数多く紹介されています。『星の王子さま』については、フランスで刊行された辞書類を使って、原書を吟味した結果、邦訳(半世紀にわたって愛読されてきた、内藤濯(ないとうあろう)先生の訳)だけでは、けっして、知ることのできない、作者の真の思想や、作品を一貫する信念などについて、少なくとも二十ケ所、新しい、重大な発見がありました。そこで、ファンタジー『星の王子さま』は、作者の幼時が、幻影となって出現して自らの半生を語り、未来の世界の平安を祈りながら書いた遺書、という推測が可能になっています。
それらの発見をとおして、二つのファンタジーの姿が、すっかり新しくなったので、作者たちは、この本の中で初めて、それぞれの、心の全体を打ち明けて、語り合っています。本書では、さらに、「まえがき」と「あとがき」で、人の生命と文化と宗教とが、ファンタジーの中で、一つに融合することを、具体的な例を挙げて論じています。両作品の、詳しい説明付きの「あらすじ」も、楽しい読み物となっています。
二人の天才が、自由奔放に論じ合い、相互の思考を確認し合っている、この本の議論に、ぜひ、参加して、心を爽快にし、生きるための活力を獲得してください。

本ものの幸福の、ありか ― 新しい幸福論の提唱


007.gif
ジャン・カズヌーヴ著/高波 秋 編訳
(四六判 244頁 定価1785円(本体1700円+税5%) 2005.12.)

遠い過去から現在まで、人は、何をねがい、何にあこがれて生きてきたか。どんな時代の、どんな文明の中に、どんな幸福の理想があったのか。そのような問いに対して、著者は、社会学、人類学の立場から的確な答えを用意してくれています。その答えの中で、もっとも、手っとり早い、幸福へのキー・ワードとなっているのが、太古の昔から現代にいたる、あらゆる人間に共通する、「天国への思い」です。ところが、古代人の社会を取り仕切っていた、その「思い」は、知性が支配する現代文明の中では、マンガや童話の牧歌的な世界に生きる幼児の心に、わずかに、余韻を留めているにすぎません。しかし、管理社会に組み込まれて生きる現代人にも、牧歌的な世界を取り戻して、人間本来の幸福を実現する可能性は、残されています。・・・そのように説く著者、ジャン・カズヌーヴは、1915年、イタリア生まれ、アメリカのハーヴァード大学大学院修了、フランス国営放送・前会長、パリ大学名誉教授です。アメリカ・インディアンの諸部族と親しく交流した科学者でもある人間愛の人、そして、哲学、文学をとおして、深く人間の心を知る著者は、哲学史上の偏狭な幸福論にとらわれない大らかな心で、われわれ日本人にも、人間の真の幸福のありかを示してくれています。
ところで、幸福とは何でしょう。金銭、社会的地位などの外的条件は、人の心を幸福にするための、確実とは言えない、単なる可能性です。そこで、一度しかない自分の人生の幸福を追求し、同時に、さまざまの問題を抱えた二十一世紀の世界の幸福を展望しようとして、訳者は、著者の意見を参考にしながら、本書の冒頭と巻末に「新しい幸福論の提唱」を書きました。チルチルとミチル、宮沢賢治、寺山修司、カール・ブッセ、さらには、キリスト教を確立したパウロなどが登場して、ユニークな、幸福達成の方法を具体的に打ち出してゆく、平易で楽しい幸福論です。

愛と死と音楽 ―西欧ロマン派の心―


006.jpg
M.ブリオン 著/高波 秋 訳
(四六判 354頁 定価1995円(本体1900円+税5%)2004.11.)

音楽は、人に、愛を体験させることができる。現実の愛よりも、深く純粋な、感動と歓喜を教えることができるのだ」と、スタンダール、ゲーテ、シェイクスピア、などの文豪が、この本に、次々に登場して、自分の体験を生々しく告白しています。愛は、また、冒険、挫折、苦悩、絶望を経て、現世を超越した静けさへと、人の心をみちびくこともあります。そうした心の遍歴を、音楽は、ことばを介さないからこそ、偽りをはさむことなく、人の心に直に伝えることができます。音楽に、そのような体験を求める人には、これは、最適の一冊です。モーツァルト、ベートーベン、ワーグナー、などの生活と情念を、著者・M・ブリオンは、こまやかに読み解いて、数多くの名曲の真髄を呈示してくれています。

ルソー


005.jpg
D.モルネ 著/高波 秋 訳
(四六判 306頁 定価1680円(本体1600円+税5%)2003.10.)

『社会契約論』は、フランス革命に、ほとんど何の影響も及ぼしていないし、ルソーは、革命などということを考えもしなかった。『エミール』を書いたとき、ルソーは、自分にも有り得たかも知れない、いま一つの、楽しい人生を空想していた。教育を革新しようなどとは、考えもしなかった。『新エロイーズ』は、ルソーが、片恋や社会的な不遇の悩みから逃避しようとして、私生活と私的感情を書き込んで作った空想物語であって、ロマン派のさきがけになろう、などとは、考えてもいなかった。…と書くと、日本では、「とんでもない」と叱られますが、フランスでは、穏健中正なルソー観です。右のことを丹念に実証している著者、ダニエル・モルネは、パリ大学名誉教授。日本人必読の一冊です。

生活の質を高める思考術 ― Q.O.L.


004.jpg
E.ディムネ 著/高波 秋 訳
(四六判 288頁 定価1680円(本体1600円+税5%)2002.11.)

日々の生活を見直して、ムダを省き、もっと自分らしい生き方、考え方を発見して身につければ、生活の質が向上します。そのための貴重なヒントを、具体的に、ふんだんに提供してくれるのがこの本です。哲学者・教育学者のジョン・デューイが絶賛し、全米ベストセラー第一位となったE・ディムネの、この本は、一九二九年、二つの大戦のはざま、深刻な経済不況の中で世に出ました。そして、自己喪失の中に沈む人々に、主体性を回復して生活を再建する勇気と助言を与えました。(同じような状況が世界を包んでいる今、訳者は、著者の視点に立って、現代日本を論じる三章を書いて付録としました。)


「第九」の合唱と「不滅の恋人」 ─ベートーベンの心の発展─


003.jpg
J.W.N.サリバン 著/高波 秋 編訳ならびに補説
(四六判 243頁 定価1155円(本体1100円+税5%)2001.10.)

「第九」の合唱の歌詞は、ベートーベンの重大な告白でした。秘められた恋が、苦悩の時を経て、美しい人間愛に高まったのです。その証拠は、第一に、シラーの書いた原詩、第二に、あの、名高い「不滅の恋人」に与える、謎の手紙。合唱の歌詞を原詩と比べ、手紙の筆跡から執筆者の心境を推測し、さらに、ベートーベン学の最新の成果を取り入れながら訳者が書いた補説を、『ベートーベンの心の発展』を説くサリバンの名著に付け加えた、感動の一冊です。

『歎異抄』の新しい読み方


002.jpg
高波 秋著
(四六判 235頁 定価1890円(本体1800円+税5%)2000.7.)

『歎異抄』は、14世紀の日本で書かれた仏教書。とは言っても、読む前に、14世紀の日本人の価値観や、仏教の基本的な考え方などを予備知識として、こまごまと仕入れて置く必要はありません。二十一世紀のふつうの日本人が、山のように背負っている問題を一つずつ、『歎異抄』に問いかけ、『歎異抄』と語り合いながら、現代を生きる糧として作り出したのがこの本。数々の新発見を盛った、抜群に面白い一冊です。

ベートーベン「第九」の心 ― 愛よ、宇宙に広がれ


001.jpg
エクトール・レネ 著/高波 秋 訳
(四六判 243頁 定価1785円(本体1700円+税5%)1999.7.)

「第九」は、聴く人の全身を揺さぶり、しかも、心の、かすかなひだに触れてくる音楽、遠い日の思い出を眼前にひろげ、それを輝かしい未来へとつなげてくれる名曲です。著者の、エクトール・レネは、この本の中で、文学や思想の美しい断片や、懐かしい風景を、存分に繰り広げて、「第九」の全曲を、ことばを使って演奏しています。音楽とは、文化のさまざまの分野の統合されたものであることを教えてくれる、まことに貴重な一冊です。